ブーフーとブールのあいだ

between boohoo and Boole

人類の不朽の名作「箱舟」とダーウイン「進化論」のヴォネガット的化学反応 / 「ガラパゴスの箱舟」

 

バイア・デ・ダーウィン号はたんなる船ではなかった。人類からすれば、この船は新しいノアの箱舟だった

 

 ノアの箱舟って映画になりましたね。主演ラッセル・クロウ

ヴォネガットの箱舟は一味違います。

 

ガラパゴスの箱舟 (ハヤカワ文庫SF)

ガラパゴスの箱舟 (ハヤカワ文庫SF)

 

 1986年発表カート・ヴォネガット11作目の長編小説

世界的な経済恐慌と戦争によって人類の滅亡の危機に瀕していたなか、何人かの男女がたまたま客船に乗り合わせ、たまたまガラパゴス諸島のある島に漂着する。そこで人類はあたらしい進化をみせることになる。なぜ彼ら彼女らは客船に乗り合わせることになったのか?新しい人類誕生の背景にはどんな物語があったのかをヴォネガットは語ってくれます。
さて、読書の一助として登場人物まとめです。
 
 

物語の語り手

 

 

レオン・トラウト

わたし

合衆国海兵隊の脱走兵

スウェーデン・マルメー造船所の溶接工(であった)

 

 

ホテル・エルドラドの宿泊客

 
 
ジェイムズ・ウェイト
35歳のアメリカ人、詐欺師
オハイオ州ミッドランド・シティ生まれ(生まれた瞬間壮絶な試練が待ち構えていた)
カナダ人ウィラード・フレミングという名前でホテル・エルドラドに宿泊
 
ゼンジ・ヒログチ
29歳、日本人、コンピューターの天才マツモト・コーポレーション所属
多くの国の話し言葉を一瞬にして翻訳できるポケット・コンピューター"ゴクビ"、その後継機"マンダラックス"開発者
 
ヒサコ・ヒログチ
26歳、日本人、ゼンジの身重の妻、生け花、つまり日本のフラワーアレンジメント技術の教師
 
アキコ
ヒログチ夫妻の娘、ガラパゴス諸島北端のサンタ・ロサリア島で生まれる
オットセイのようにつやつやした美しいにこ毛でおおわれてる
後に、カミカゼとサンタ・ロサリア島初の結婚式をとりおこなう
 
アンドルー・マッキントッシュ
55歳、アメリカ人、親譲りの巨万の富を持つ実業家で冒険家、男やもめ
精力的で有能な野外スポーツ愛好家であり、恐ろしい危険をおかすことがなによりも好き
 
セリーナ・マッキントッシュ
18歳、アメリカ人、アンドルーの先天性盲目の娘
 
メアリー・ヘップバーン
51歳、アメリカ人、ニューヨーク州イリアム出身の未亡人
イリアムの公立高校の生物の教師をしていた
 
ロイ・ヘップバーン
54歳、メアリーの夫、イリアム最大の企業ゲフコ社の機械工
脳腫瘍でこの世を去る
 
 

ホテル・エルドラドに関わる人々

 
 
ヘスース・オルティス
25歳、インカ貴族の後裔、ホテル・エルドラドのカクテル・ラウンジのバーテン
 
ジークフリート・フォン・クライスト
ホテル・エルドラドの支配人
エクアドル生まれのドイツ人
 
アドルフ・フォン・クライスト
バイア・デ・ダーウィン号船長、ジークフリートの三歳年上の兄
 
ゴットフリート・フォン・クライスト
エクアドル最大の銀行の取締役会長
ホテル・エルドラドの支配人とバイア・デ・ダーウィン号の船長の叔父、
兄のヴィルヘルムと共同でその船とホテルを所有していた
 
バスティアン・フォン・クライスト
クライスト兄弟(ジークフリート、アドルフ)の父親
エクアドル生まれの彫刻家で建築家
ハンティントン舞踏病の保因者
 
 

ようこそ“世紀の大自然クルーズ

 
 
ボビー・キング
世紀の大自然クルーズ”を企画した広告代理業者、アメリカ人
 
ジャクリーン・ケネディ・オナシス
世紀の大自然クルーズに参加予定者として名を連ねる
35代目の合衆国大統領であるジョン・F・ ケネディの夫人
この惑星で最も尊敬されている女性
 
ロベール・ぺパン
バイア・デ・ダーウィン号の調理室主任、"フランス最高のシェフ"
 
エルナンド・クルス
バイア・デ・ダーウィン号の一等航海士
 
《ザ・トゥナイト・ショー》の司会者
 
ホセ・セプルベーダ・デ・ラ・マドリード博士
 
テオドーロ・ドノソ博士
エクアドル国連駐在大使、キート出身、詩人、医師
 
 

カンカ・ボノ族そして人類の存続に図らずも寄与した人々

 
 
ヘラルド・デルガード二等兵
みやげ物店に盗みに入った男、部隊からの脱走者
「もし彼がその店に盗みにはいらなかったら、今日の地球上にはおそらくひとりの人間も生きていなかっただろう。」
 
エドゥアルド・ヒメネス
若いエクアドル人パイロット
人類の未来に多大な影響を残した飛行士
 
バーナード・フィッツジェラルド
80歳になるカトリック司祭
アイルランドからやってきて、半世紀ものあいだ、カンカ・ボノ族の中で暮らしていた
 
ポール・ティベッツ
第二次大戦中、ヒサコ・ヒログチの母親の上へ原爆を落とした男
にこ毛の発達をもたらした
 
ドミンゴ・ケセダ
カンカ・ボノ語の通訳
 
 

戦争

 
 
ギレルモ・レイエス中佐
ペルー空軍パイロット、グアヤキル国際空港を爆撃する
 
リカルド・コルテス少佐
ペルーのパイロット、コロンビアの貨物船サン・マテオ号にミサイルを発射する。
彼はバイア・デ・ダーウィン号を爆撃したと思っている。“悪気のないまちがい”
 
 

思い出

 
 
ノーブル・クラゲット
メアリーにとって忘れられない詩を書いてきた教え子
のちにベトナム戦争で戦士する
 
ドウェイン・フーヴァー
べらぼうに羽振りのいい自動車ディーラー、ファースト・フード・レストランの地方チェーンの経営者
ジェイムズ・ウェイトがまだ16歳のとき、ドウェイン宅の庭の芝刈りをしていた。
 
ロバート・ヴォイチェホイッツ
イリアム高校の英語科主任教師、男やもめ
 
ベール・オーラフ・ローセンクィスト
造船所の職長
 
ヤルマー・アーヴィット・ブーストローム
造船所の溶接工
 
ネオミ・サープ
わたしの隣の家に住んでいた主婦
 
 

新しい人類

 
 
この島を故郷とする最初の人間の男性
 
カンカ・ボノ族の女たち
船長の子を最初に生んだのがシンカ、二番目に生んだ女はロア、三番目に産んだ女はリラ、四番目に生んだ女はディルノ、五番目に生んだ女はナンノ、そして六番目に生んだ女はキール
 
 

まとめ後記

 
 「猫のゆりかご」では世界の終末をむかえましたが、「ガラパゴスの箱舟」では新しい人類が誕生しました。ヴォネガット初期の傑作「猫のゆりかご」とあわせて読むとこれまた面白い!
 
 
ちなみに、ダーウインの進化論をあらわした本にはこんな題名がついています。
「自然選択による種の起源、すなわち生存闘争に有利なる種族の存続について」

興味がわいた方、まずこちらの本はいかがでしょうか?