ブーフーとブールのあいだ

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人生にご用心! / 「デッドアイ・ディック」

 

人生にご用心!

 

 

 

1982年に出版されたカート・ヴォネガット10冊目の長編小説。

 

 

どんなおはなし?

主人公ルディが50歳になって自分の人生を振り返るという物語です。
彼は子供の頃にある犯罪をおかしてしまいます。そのため彼はデッドアイ・ディックという悪意のこもったあだ名で町の人々にしれわたりました。大人になってから彼は薬剤師になり、書いた作品はたった一作であるが戯曲作家になります。やはり大人になってからも町の人は彼を見つけると言うのです。デッドアイ・ディックだ!と。
彼は自分の人生を振り返ることで私たちにひとつの教訓を教えてくれました。それがこれです。「人生にご用心」。

若い頃にあのヒトラーと親交があったというルディの父は芸術家。本人はいたって真剣だけどもやることなすことすべてが滑稽で、ルディやルディの兄にとってはありがた迷惑なことばかりでした。
ルディの母は家事を一切しませんでした。
ルディの兄は5回結婚します。

どんな時代に生まれるかわかりません。どんな国に生まれるかわかりません。ましてやどんな家族に生まれるかわかりません。ルディは人生に罹ってしまいました。。人生を患ってしまいました。だからルディは言うのです。「人生にご用心」

個性的な登場人物がわんさか出てきます。そして舞台は、ヴォネガット作品に馴染みのミッドランド・シティです。あのドウェインやフレッド・T・ バリーも出てきます。そんなわけでこの作品の前に「チャンピオンたちの朝食」を読んでおくとさらに楽しめますよ。

ヴォネガットの小説を楽しむためには欠かせない一冊 / 「チャンピョンたちの朝食」 - ブーフーとブールーのあいだ

 

私のお気に入りのこの場面

「十七回もおれはいうんだぜ、シャングリ・ラではだれも死なない、と」

このセリフは、ルディのたった一夜で上演が打ち切られた戯曲に出てくる登場人物ジョン・フォーチュンを演じた気の毒な俳優、シェルドン・ウッドコックの言葉です!

シャングリ・ラにたどり着いたと信じているジョン・フォーチュンは死にかけています。シャングリ・ラでは誰も死なないと口癖のように言っているにも関わらず。

ジョン・フォーチュン演じる役者は、誰も死なないと言っておきながら死んでいくことに納得がいってない様子です。つまり、「ジョン・フォーチュンはシャングリ・ラには行っていない」と、この役者は言いたいのかもしれません。が、この戯曲を書いたルディの肩を持つならば、シャングリ・ラに到達したのだと信じればそこがシャングリ・ラなのですとわたしはその役者に言いたい。そんなことを感じた、私の大好きな場面の一つです。

ジョン・フォーチュンよ永遠あれ!

登場人物をまとめてみました。

「デッドアイ・ディック」登場人物まとめ

 

 

 

 

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